フィギュアスケート分析ノート
自己流に、マイペースで、のんびりと。
羽生選手の3Lz+2Tはザヤではない。ショートにザヤは無い。
この記事では、ショートプログラムで羽生選手の3Lz+2Tが無得点になったのはザヤックルールによるものでもないし、新ルールは全くの無関係であることを説明したいと思います。


少なくとも、2015・2016のISU公式Technical Panel Guidebookにおいて、

ザヤがあるのはフリープログラムのみです。


英語をそのまま載せますが、関連性がある文章のみ簡単な翻訳をします。英文を飛ばして日本訳だけ読んでいただいても全然OKです。:

SOLO JUMP
Free Program
Jumping elements are individual jumps, jump combinations and jump sequences. A well balanced Free Skating program must contain 8 jumping elements for Senior & Junior Men and 7 jumping elements for Senior & Junior Ladies one of which must be (or must include) an Axel type jump. Individual jumps can contain any number of revolutions. Any double jump (including double Axel) cannot be included more than twice in total in a Single’s Free Program (as a Solo Jump or a part of Combination /
Sequence).

Of all the triple and quadruple jumps only two (2) can be executed twice. If at least one of these executions is in a jump combination or a jump sequence, both executions are evaluated in a regular way. If both executions are as solo jumps, the second of these solo jumps will be marked with the sign “+REP” and will receive 70% of it’s original Base Value. Triple and quadruple jumps with the same name will be considered as two different jumps. No triple or quadruple jump can be attempted more than twice. If a third repeated jump is executed in a combination or sequence, the entire combination or sequence will be treated as an additional element and therefore not considered (but this element will occupy a jump element box if one is empty).

項目: 単独ジャンプ・フリープログラムのルール:

フリープログラムにおいて、2Aを含むダブルジャンプは2度までとする。
同じ種類のトリプル・クワドは2度までなら別のジャンプとするが、3回試みた場合は
 3度目のジャンプはノーカンとするとあります。(3度目のがコンビネーションだった場合、
 コンビネーションごとすべてゼロ点)

このルールは馴染みあるザヤック・ルールですよね。2年前から、新たに2回転ジャンプも考慮されることになりました。
ザヤック・ルールは過去に同じ種類のジャンプばかり飛んでたザヤック選手がいて、それを防ぐために作られたルールで、そこから由来されたんだそうです。

羽生選手の3Lz+2Tがノーカンになった理由ですが、それにはザヤは全く関係がありません。

そもそも、


ザヤはショートにありません。


あるというのならば、上記に説明されているザヤック・ルールの内容で、なぜ羽生選手が2度ダブル・トウを飛んでノーカンになったのか説明できますか。羽生選手の2回の2Tがダメで、なぜ女子が3T+3Tをショートで飛ぶのはOKなのかを説明できますか。


今回羽生選手の3A / 2T / 3Lz+2T で、後半2つがノーカウントになったのは2つのルールに違反したからです。


こちらはショートプログラムにおける「単独ジャンプ」のルールです:


SOLO JUMPS
Short Program of the season 2015 – 2016 must include 2 solo jumps:


- double or triple Axel for Senior & Junior Men and for Senior Ladies, double Axel for Junior Ladies;
- a jump immediately preceded by connecting steps and/or other comparable Free Skating movements:
①Senior Men - any triple or a quadruple jump; 
Senior Ladies - any triple jump;
Junior Men and Ladies - double or triple Flip.
For Senior Men when a quadruple jump is executed in a jump combination, a different quadruple jump can be included as a solo jump. For Senior & Junior
 Men and for Senior Ladies when the triple Axel is executed as an Axel jump, it cannot be repeated again as a solo jump or in the jump combination. ②Solo jumps must be different from the jumps included in the combination. A single spread eagle, spiral/Free Skating movement cannot be considered as meeting the requirements of connecting steps and/or other comparable Free Skating movements the lack of which must be considered by the Judges in the GOE.


ショートプログラムにおける単独ジャンプのルール

①シニア男子: トリプルジャンプかクワドジャンプであること。
 →羽生選手はダブルトウを飛んでしまったので、ノーカンになりました。

②コンビネーションジャンプに含まれるジャンプは単独ジャンプと異なる種類であること。
  羽生選手はこのルールに反してしまった。
  単独ジャンプで「2T」を飛んでしまった事により、コンビネーションジャンプで「2T」を飛ぶことが許されなくなってしまったのです。ノーカンを防ぐには、「3Lz+3Lo」・「3Lz+3T」・「3Lz+1T」・「3Lz+2Lo」・「3Lz+1Lo」の5つの選択肢の中から選ぶほかなかったと思います。


◆これは、ザヤルールとどう違う?

全く違いますね。第一に、2度までならOKというザヤック・ルールなら、羽生選手は2回しか「2T」を飛んでないのでそもそも違反してない事になります。


要は、羽生選手はザヤったのではなく、ダブったのです。


たとえば、男子選手Aが:

4T / 4S+4T / 3A

・・・という、2つ4回転トウループを入れる構成を成功させても、4S+4Tがゼロ点になります。
「単独ジャンプ(4T)」はコンビネーションジャンプに含まれていないものと定められているからです。

ですので、これらのジャンプで得点にしたいならば、

4S / 4T+4T / 3A  

でOK。この場合、ソロジャンプ(4S)は、コンビネーションジャンプ(4T+4T)に含まれていませんので。

これが、ダブりルールです。
羽生選手はソロジャンプの2Tがコンビネーションジャンプに含まれている3Lz+2Tダブったので、ノーカンになってしまった。

この単独とコンボのダブり禁止ルールに基づくと、なぜ「女子はよく3T+3Tを飛んでるのに、ノーカンにならないのか」が説明できますよね。答えは簡単で、単独ジャンプで「3T」を飛んでいないからです。ザヤックルールではこういう説明できません。

女子がショートで3T+3Tを予定していると、大体こういう構成になります:

3T+3T / 3Lz(F・Lo) / 2A

ね?ダブり無しです。

もしこれが、3F+3T / 3F / 2A だったり、 3F+3T / 3T / 2A だったりとすると、タブったジャンプがノーカンになります(この場合単独ジャンプがノーカンですね。コンビネーションが先に試みられたので)。


よって、

羽生選手は、ザヤック・ルールに新たに加えられたダブルジャンプの規定によってノーカンになったのではなく、もう何年も前からあるルールでノーカンになったのです。



なぜこの記事を書いたのかといいますと、私も最初羽生選手のプロトコルを見て、なぜノーカンになったのかわからなかったからです。どのルールで???と謎でした。そういえばこういうのがあったなあと、ガイドブックを読み直して思いだしました。ザヤルールは単純ですが、今回の羽生選手のミスはわりと特殊なほうだと思います。あまり見ないミスでしたね。

織田さんがその場でパッと説明できなかった事を批判する声も一部あったようですが、スケオタの私ですらこのルールをすぐに思いだせなかったですし、羽生選手の演技が終えてから、数分・・・数時間・・・・数日あったたくさんのスケートファンですら間違った知識でザヤザヤいっていたので(ギャグじゃないですよ!)、瞬時にルールを思いだせなかった織田さんを責める一部の人たちはどうかと思いますし、そもそもザヤでなかったのだからザヤだと説明しなかったのは良かった

フィギュアスケートは毎年ルールが変わり、ここ最近は2回転ジャンプや連続ジャンプの制限まで出来たり、頭がこんがらがってしまったのは仕方が無いように思います。ですが、織田さんはプロを名乗る解説者。織田さんにはぜひぜひ今後に繋げていってほしいです。私の中では一番の解説者ですので。解説のお仕事も頑張ってください。応援しています。


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 >ノーカンを防ぐには、「3Lz+1T」・「3Lz+2Lo」・「3Lz+1Lo」の3つの選択肢の中から…

今回の羽生選手の場合、「+3T」か「+3lo」でもOKですよね?(もし違ったらスミマセン)
本人は単独ジャンプが「2T」になってしまったのを「3T」になったと勘違いして、
「(機転をきかせて)セカンドを2Tにした」らしいですが…。
今回はルッツのあとにバランスを崩してたから、セカンドに3回転を付けるのは難しかったかも。
…にしても、羽生選手のSPのPCSは高すぎだなぁ…。
FSのPチャンのGOEの大盤振る舞いっぷりも凄まじいけどw

また、フリーの2回転ザヤックルールなんかは選手を混乱させるだけだよな~と思いますね。
選手はみんなそれなりにリカバリ対策をしているんでしょうが、本番で想定外の事になった場合には頭が混乱しそう!
その中で表現にも気を使わなきゃならないなんて、パニック必至ですよね…。

あ、殿の解説は、私も好きです!
わかりやすく丁寧で、選手への愛情が感じられるし。
稔なんかの解説だと素人親父のお茶の間感想みたいで、ゲンナリですもん。
あきら | URL | 2015/11/03/Tue 15:36 [Edit]
>>ノーカンを防ぐには、「3Lz+1T」・「3Lz+2Lo」・「3Lz+1Lo」の3つの選択肢の中から…

>今回の羽生選手の場合、「+3T」か「+3lo」でもOKですよね?

はい、全然OKです。ルッツの着氷に乱れがあり、トリプルはつけたくてもつけられなかったのかなと勝手に決めつけてしまい、3+3の選択肢を書かずにいました。後で記事の一部を訂正しますね。ご指摘ありがとうございます。

ただでさえルールが複雑なのに、2+2はノーカン!とかやりすぎだなあと思います。ああぁ・・・どの種類のジャンプでも2+2はダメだったのか思いだせない・・・・。2Lz+2Tはダメだったのは覚えてるんですが・・・・。ショートもフリーもでしたっけ・・・??もうこのレベルですよ。ルールが増えすぎ・・・。

佐野さんは選手が4回転を飛ぶと「いいねぇえええ↑↑」と反応する人・・・程度にしか私は記憶してないですね。それに、教育に体罰は必要とか言ってた方ですから、日常生活で関わりたくないタイプだと思ってます。良い印象はないですね。
熊子 | URL | 2015/11/03/Tue 16:22 [Edit]
初めまして。
いつも楽しく記事を拝見しています。

今回羽生選手のジャンプが二つもノーカンというびっくりな演技を見て、改めてフィギュアスケートのルールの難しさを思い知りました。

たられば、の話なのですが、3Lzの着氷が乱れて3回転ジャンプが付けられそうになかったあの時、3Lz単独にした場合が一番点数がつきましたね。
2T+SEQ、3Lz、となると思います(3Lzの前はステップをしているように見えますし、コンビネーションジャンプが入らなかった場合、選手の有利になるように判定するため)

また、1T、1Loの場合は、コンビネーションジャンプの要件を満たしていないため、3LzからGOE-3だと思います。

あまりに今回のミスにびっくりしたため、いろいろ調べてみたのですが、合っているでしょうか?


去年から3Lz-3Tが安定していないように見えるので、3A、4T-3T、3Lzとかはどうでしょうか?
リカバリーもできますし、最後にコンビネーションジャンプというのはドキドキしてしまいますね。


N杯ではしっかり跳んでくれるといいなと思います。

熊子さまの解説、これからも楽しみにしています。
ゆう | URL | 2015/11/03/Tue 18:20 [Edit]
熊子様

>どの種類のジャンプでも2+2はダメだったのか思いだせない・・・・。2Lz+2Tはダメだったのは覚えてるんですが・・・・。ショートもフリーもでしたっけ・・・??もうこのレベルですよ。ルールが増えすぎ・・・。

2+2になった場合は結局「UR、DG、!、e関係なしに【基礎点の低いジャンプ】がノーカン」です。
たとえば2S<<+2T<<なら2S<<の方が残って2Tがノーカン。
但し2T+2T<<になった場合は回転の足りている2TとDG判定の2Tの
どっちを基礎点に残すんだろうなという素朴な疑問もありますが。
ちなみにFSの方は2+2は全然OKです(最初はFSもノーカン判定にしようとしてましたが結局あきらめた)

【異なるジャンプ要素に跨ってジャンプが重複すればノーカン】については
2008年中国杯でトマシュ・ベルネル選手が2Tで抵触してしまったので知ってました。
「えーっ?!2回転や1回転にすっぽ抜けたジャンプでも重複アカンの???」って思いましたもん。
真央姫も茶番のシーズンにロシア杯で2Aが重複するというミスがありました。
コンボとステップからのジャンプで重複してノーカンはいくつかありましたが
アクセルジャンプとコンボで重複というのはレアなケースでしたのでこちらもよく覚えています。
megumi | URL | 2015/11/06/Fri 10:35 [Edit]
■ゆう様

初めまして。リカバリーの件ですが、その手があったか!と思いました。たしかに悪い点(ノーカン要素)を一点集中させたら減点が可能な限り抑えられますね。

3A、4T-3T、3Lzよりも、3Lz+3Tを飛ぶほうが比較的楽だと思いますし、ずっと3Lz+3Tをショートで飛んできたのでこちらのほうが馴染みがあるんだと思います。羽生選手はフリーで4T+2Tを予定していますが、4回転から+3Tをつけるとなると、着氷の仕方を変えなきゃいけないので、あちらこちらで新しい事をさせるよりも、以前からの構成で今のプログラムを安定させたいのかなと推測します。


■megumi様

ルールについて教えてくださってありがとうございます。浅田選手は3A+2Tでしたからね・・・そういうリスクもついてきて大変だったでしょう。

>但し2T+2T<<になった場合は回転の足りている2TとDG判定の2Tの
どっちを基礎点に残すんだろうなという素朴な疑問もありますが。

選手に有利になるようにというルールがある限りは、2T<<がキックアウトされるのかなと想像しますが・・・。うーん。
熊子 | URL | 2015/11/06/Fri 13:22 [Edit]
熊子様

はじめまして。

明解な記事を有難うございました。私も「ザヤ」ではなく「ダブり」だと思い、同じく2015-16年版のTechnical Panel Handbookを参照し、確認した所でした。

SPで、4T+3Tとコンボにしている選手は「ダブる」ことはありませんが、羽生選手の様に同じ種類(トーループ)の4回転と3回転をコンボでなく別々に入れている選手はわりと多く、ダウングレードや抜けの場合の「ダブり」がないよう、注意が必要ですね。

その点、村上選手の今回の構成は全く「ダブり」の心配がありません。4S、3Lz+3Loと全部種類が違いますから、他の理由でノーカンの可能性はあっても(1S、2S、3Lz+1Loの1Lo、2Lz+2Loの2Lo等)、ダブりでノーカンとなることはありませんね。

SPの1回転に関しては、ソロジャンプの1回転だけでなく、コンボの1回転も1回転のジャンプだけですが、無効となります。例えは、3Lz+1Loは1Loが無効となり基礎点は3Lzの6点となります。

ジュニア女子以外のSPの2+2については、megumi様が説明されている通りで、得点表の出ている文書に示されており、今季版はCommunication No. 1944で、9頁に出ています。

羽生選手の構成で、4Tの予定が2Tになってしまったら、最後のコンボは3Lz+3Loか3Lz+3Tであれば高い基礎点となりますが、2Tさえ入っていなければ、仮に2Lz+2Loでも微々たるものですが得点につながるコンボとはなります。

3Lz単独にした場合は、ゆう様のおっしゃる通り、テクニカル・パネルの判断でおそらく2Tの方をコンボと解釈・判定し(Handbookの24頁)、表記は2T+COMBOと3Lzとなります。また。2T+COMBOのGOEは、3Lz+1Loと同じく必ず-3(No. 1944の14頁)となるようです。

+SEQはFSでのシークエンス表記ですね。FSには、+REPもありますが、+COMBOはありません...FSのジャンプ規則はまた独自で、両方の様々なシナリオを想定して準備した方が良いに越したことはないのでしょうが、皆さんがおっしゃる通り、試合に全身全霊で臨む競技者陣には過酷なことです。

確か、今季終了後、来年出されるルールが次期オリンピックのルールとなるのでしか??そうであれば、オリンピックまで、もう一度規則更新があります(!)から本当に大変です。

考えてみれば「ザヤック・ルール」というのはあくまでも俗称で、その本意は規定以上の回数は無効とする事にありますから、SPでは1回、FSでは2回までという規定にはずれたという意味で、今回の羽生選手のSPも「ザヤった」と表現できなくもありません。ザヤック、タノ、リッポンルッツ等は俗称にとどまっていますが、ビールマンやサルコウの様にその名がフィギュア用語として定着し正式採用されている場合は選手にとって栄誉でしょうね--

「ザヤック・ルール」が既に存在していてよかった…「オダ・ルール」と呼ばれるようにならないでヨカッタ、ヨカッタ…
happy観戦者 | URL | 2015/11/11/Wed 06:15 [Edit]
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| | 2015/11/24/Tue 14:20 [Edit]



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